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★ 読書会の記録 ★
2013年


「グレート・ギャッツビー」
スコット・フィッツジェラルド/作
2013年12月6日
 村上春樹の訳で読むと、これまでとは全然違った話であることに驚いた。貧しい生まれで金持ちになったギャツビーと上流階級生まれのデイジーとの恋愛の話かと思いきや、アメリカのシカゴより西部と東部の社会的・文化的なギャップが複雑に絡み合い、結婚を意識した恋愛がその人の理念イデアをも根本的にくつがえすことになることなど、実はとても深い内容だった。語り手のニックがギャツビーを理解していくように、読書会もちょっとずつ謎を解き明かしていくようなスリリングでとても刺激的なものになった。

「箱男」
安部公房/作
2013年11月15日
 体を覆えるくらいの段ボールを被った箱男がその中から見た世界の記録。理屈よりも五感を使って楽しむ作品ということで、午前中行った『ぐりとぐら』と共通するところもあって、意外でした。担当者が小説の中と同じように作成してくださった箱を、実際に参加者で被ってみたところ、妙に安心するという声が多々ありました。

「風立ちぬ」
堀辰雄/作
2013年10月18日
 主人公が死にゆく恋人へ注ぐまなざし。冷涼な空気に包まれたようなその距離感 を、美しさとみるのか、冷淡とみるのか。話題のジブリ映画についても。読書会は、辛口に進みました。

「風の歌を聴け」
村上春樹/作
2013年9月20日
 村上春樹のデビュー作。今とは違ったみずみずしさ、若さがあり、その点は共感した人が多く、盛り上がりました。

「山椒魚」
井伏鱒二/作
2013年7月12日
 成長していたことに気づかずに穴から出られなくなってしまった山椒魚が、同じように蛙を閉じ込めてしまう話。
 昭和はじめの経済恐慌のあった時期に書かれた作品ということで、意外に現在と重なるところがありました。山椒魚と蛙の違いをどう考えるか、最後の場面をどう考えるか、話が深まりました。無駄のない表現に作者の力量を感じました。

「君本家の誘拐」 (「鍵のない夢をみる」より)
辻村深月/作
2013年6月21日
 良枝(主人公)が買い物の途中で愛娘を乗せたベビーカーが無くなっていることに気が付く。 ショッピングモールは大さわぎに…。子育て中の良枝(若い母親)の暮らしを、心情を描いた作品である。子育て経験者の多い中での読書会、みんな自分と良枝を照らし合わせて、共感できる部分、理解できないところ等、いろいろな意見が出された。良枝は、今まで一所懸命やれば自分の望みがかなうと信じていたが、努力だけではどうしようもできない事がおこる「子育て」というものに直面し、翻弄され、このような事件を起こしてしまうまでになってしまったのでは?という意見には、みんな納得できた。最後の「あなたのためならなんでもする」という言葉は、『あたたかい母親の愛情表現』と理解する一方、『いったい何をしてしまうんだろうという…』という心配の意見も出された。

「共喰い」
田中慎弥/作
2013年5月24日
 第146回芥川賞受賞作品。17歳の主人公は、性行為の時に暴力を振るう父親と、自分は同じなのではないかと悩んでいます。自立した大人になるには、思春期に親を越えることが大切だということで、性について、共喰いは何と何なのか、主人公は父親を越えられたのかなど話し合いました。

「恥辱」
J・M・クッツェー/作
2013年4月26日
 ノーベル文学賞作家J・M・クッツェーの『恥辱』は、まさかのブッカー賞二度目の受賞もしている超メジャーな作品。五十代の大学教授があっという間に教え子と関係を持ってしまうところから始まります。皮肉のたっぷり効いたテンポ良く歯切れの良い文章と、スピーディな展開に読まされますが、実は、骨太で重量級。話し合いは的を絞って、抜き出した手書きメモのレポートを頼りに、父親と娘の子離れ親離れを中心に話をしました。だいぶ時間オーバーしました。

「こころ」
夏目漱石/作
2013年3月15日
 上、中、下の部からなる夏目漱石の代表作。今も昔も、高校の現国教科書に取り上げられる、「先生と遺書」が有名。確かに遺書を書く漱石の筆はなめらかで勢いがあり、読者をぐいぐいと引きこんでいく。先生が 理想家肌の”私”に向けた遺書。それは、近代化を急速に進め、個人主義思想を取り入れた明治時代に生きた者から、大正という新しい時代を生きていく私に向けた、成長の糧にしてほしいというメッセージ。
 明治時代と、現在の日本は、価値観の混乱という意味で共通点はある。私たちも、そんな時代に翻弄されずに、自尊心を持ち続けながら生きることの意味を再考させられる読み返す度に新しい気づきのある小説。

「愛人(ラマン)」
M.デュラス/作
2013年2月15日
 当時フランス領だったベトナムでのはなし。
 メコン川の渡し船で私は、華僑の金持ちの男に声をかけられ愛人になる。二人の奇妙な関係、彼は彼女を愛してるが、彼女は彼の愛情にいっさい応える気がない。「十八歳でわたしは年老いた」というフレーズが有名。いったいなぜ年老いてしまったのか。

「もし高校野球の女子マネージャーが
ドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

岩崎夏海/作
2013年1月18日
 '60年代に会社でドラッカーの経営学ついて教える立場にいたメンバーの話がおもしろかった。小説としては要所要所でドラッカーを都合よくあてはめている感じではあるが、自分に合わせてドラッカーを利用している目の付け所はうまいと思う。ドラッカーが本来言っていることと違うのではと思うが、「もしドラ」の方が今の社会に合っているのだろう。



「いつもちこくのおとこのこ
ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー」

ジョン・バーニンガム/作
2013年12月6日
 「ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー」と繰り返されるフルネームの語感が心地いい。子どもの豊かな想像力を大人も一緒に楽しむ余裕があるといい。こういう先生の抑圧的な態度に反発し、自分の価値観を広げに外へ出ていく思春期の話とし見ても面白いなど、先輩ママさんの自分の子の思春期における体験談も交えて、大いに盛り上がった。

「ぐりとぐら」
なかがわりえこ/作
2013年11月15日
 子どもたちが大好きな絵本だということは皆さん実感しているのですが、なぜなのかはあまりよくわからないので、色々子どもたちの反応を思い出して考えてみました。話し合っているうちに色々なことが見えてきて、よくできた絵本なんだなと納得しました。

「かいじゅうたちのいるところ」
モーリス・センダック/作
2013年10月18日
 絵本の定番中の定番。お試しワークショップということで、読み聞かせから入りました。その後、車座になって、自分の体験を交えて語り合いました。 テーマは、この絵本の親子関係について。親として子どもをしかるとは? 子どもにとってかいじゅうたちのいるところとは? 親である私たちにとってかいじゅうたちのいるところとは? この物語の中のジェンダーについて。
 話は、どんどん深まりました。逆に言えば、この物語が、いろいろな迷宮を含んでいるということ。一筋縄ではいかないすごい絵本だね〜と参加者一同、唸らせられました。

「星の王子さま」
サン・テグジュベリ/作
2013年9月10日
 たくさん出ている翻訳を読み比べたり、それぞれのこの本に関するエピソードを語ってもらったりしました。男性視点で描かれていることに驚きました。『カモメのジョナサン』リチャード・バック/作との関連の話にもなり、1月にとりあげようということになりました。

「おおきな木」
シェル・シルヴァスタイン/作 ほんだきんいちろう/訳
「おおきな木」
シェル・シルヴァスタイン/作 村上春樹/訳
2013年7月12日
 木のことが大好きな少年と少年のことを大好きな木、少年が成長とともにふたりの関係はどうなっていったでしょうか…。
 担当は決めずに二種類の翻訳本を朗読後、ニュアンスの違いを感じながら、思春期の親子関係について話が深まっていきました。

「ザガズー じんせいってびっくりつづき」
クエンティン・ブレイク/作 谷川俊太郎/訳
2013年6月21日
 ジョージとベラのところへ「ザガズー」が送られてきました。二人はザガズーがかわいくて幸せな日々を送っていましたが、ある朝“大きなはげたかのあかんぼう”に変わっていました。次は“ちっちゃなぞう”に。次は“イボイノシシ”に……。
 子どもの成長を表現した絵がリアルでおもしろく、思春期ってこんな感じだよねと話が盛り上がりました。でもなぜか一番盛り上がったのは最後の絵について。参加者の年齢層のせいでしょうか、とても気になりました。

「おぼえていろよ おおきな木」
佐野洋子/作
2013年6月11日

 庭の大きな木に文句ばかり言っているおじさんがとった大胆すぎる行動は? その後の顛末は? おじさんと木が象徴するものは、夫婦だったり、親子だったり。さすがに大人の読書会。話題はどんどん深まっていきました。

「おてがみ」
(「ふたりはともだち」より)
アーノルド・ローベル/作 三木卓/訳
2013年5月14日
 手紙を待つ時間が一番悲しいと嘆くがまくんのために、かえるくんは手紙を書いて送ります。配達を頼んだ相手は”かたつむり”。当然なかなか届きません。でも、かたつむりが手紙を持ってきてくれるのを、ふたりで一緒に待つ時間は至福の時でした。
 手紙を書いてハイと手渡すのでもなく、速く配達してくれる動物に頼むのでもない、かえるくんの愛情の深さ(ローベルの愛情表現のうまさ)に完敗です。
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