<<戻る

★ 読書会の記録 ★
2011年
「公民館の建設」
寺中作雄/作
2011年12月16日
 これは小説ではなく、戦後、日本に本来の民主主義を定着させるために公民館建設にご尽力された、当時、文部省役人だった寺中氏の著作です。焦土と化した日本が世界の表舞台にたてる国になれるよう願う熱い思いが伝わってきます。かつて、このように目覚めた人がいたのか…と。

「象を撃つ」
ジョージ・オーウェル/作
2011年11月17日
 「一九八四年」を読むにはあまりに大変だということで、オーウェルがビルマ赴任中に体験したことを描いたこの短篇を選びました。全体主義的、管理主義的な世界が滅びつつあることを描いているところ、「一九八四年」を予感させます。宗教社会学を研究されている方が飛び入り参加して下さって、象をめぐる議論にも。

「停電の夜に」
ジュンパ・ラヒリ/作
2011年10月17日
 現代の深刻なコミュニケーション不全のカップルを扱ったのだとすると、他人との関係を持つためにスタート地点に立つことができた二人のハッピーエンドと読めるのでしょうか。村上春樹に通ずると感じました。夫婦関係に限らず、それくらい現代は人と関係が持てない深刻さを抱えているのでしょう。

「デンドロカカリヤ」
安部公房/作
2011年9月16日
 洗練された言葉が組み立てられたかっちりした短篇であるのに、初版と改訂版が掲載された二種類の文庫があることに途中で気づき、混乱してしまいました。また、それを度外視してもメンバーの読みに開きがあり、寓意の深さを思い知らされました。(昭和24年の短篇。)

「センス・オブ・ワンダー」
レイチェル・カーソン/作
2011年8月25日
 自然に驚く感覚を思い出させてくれる、保護者に向けた一種の育児書とも読めるエッセイ。ただ、小説ではないこと、その違いをご指摘するご意見をいただき、あらためて小説の多角的読解のおもしろさを再認識させられました

「片腕」
川端康成/作
2011年7月8日
 女性の片腕を借りて一晩を過ごすことになったひとり暮らしの男性を描いた短篇。個人的な感覚的世界をたっぷり味わいつつ、誰にも通ずるものも感じました。ラストをどう読むかで議論に。

「二十六人とひとり」
マクシム・ゴーリキー/作
2011年6月6日
 遠いロシアの童話のような物語。地下のパン工場で毎日奴隷のように働かされる26人の男性が次第にひとつの人格になっていく感じ。その彼らとひとりの少女の、ある種の恋愛関係を描く。男たちが作る巻きパンはベーグルのこと?

「すぐり」
アントン・P・チェーホフ/作
2011年5月19日
 19世紀末に書かれた、小市民性を批判して民衆への教育の大切さを訴える作品。未知谷から出版されている大人向け絵本の訳者のあとがきに、チェルノブイリで内部被曝されたコメントが興味深く、取り上げることに。原発事故はあれこれ新事実が巷を騒がせていますが、こんなときこそ、長期的展望に立って生き方を模索する読書会がささやかだけれど役にたつと良いと思います。

「23分間の奇跡」
ジェームズ・クラベル/作
2011年4月22日
 どうやら戦争に負けて、敵国に統治されることになったある国のある小学校。新しい価値観を持った教師は、予想に反し子どもたちの言葉を優しく聞いてくれるのだが…。教師の言葉にのって、子どもたちは国旗をみんなで切り分けてしまう。作者の意図についても議論になりました。

「坊ちゃん」
夏目漱石/作
2011年3月10日
 古いものと新しいものの価値観の間で迷っている庶民に、あくまでも寄り添おうとする漱石の大きさを感じました。それが坊っちゃんの発達障害的コミュニケーションを描くことに象徴されているような気がしました。今の私たちは、ここをどう乗り越えたらいいのかということを考えさせられました。

「雪わたり」
宮澤賢治/作
2011年2月24日
 図書館での読書会。小学校でこの作品を読み聞かせする予定のボランティアの方々が参加して下さり、いつもと違う雰囲気に。

「くまのプーさん」
A.A.ミルン/作
2011年1月21日
 物語を読み込んでいるうちに、いつの間にかその人それぞれの土台になっている幼少時の記憶について語り合うことに。80歳男性の方の母親の最初の記憶のお話には驚きました。なかなかこの物語の本質をついていたのではないかと思います。


HOME